それ、昔の記憶じゃないかも。“いまも続く神経の反応”という見方
はじめに:「トラウマ」は特別なもの?
「トラウマ」と聞くと、
精神的なこと、過去のショックな出来事を思い浮かべて
「自分には関係ない」と感じる方も多いかもしれません。
でも実は、
**“そのとき何が起こったか”ではなく、“そのとき神経がどう反応したか”**がカギなんです。
神経系が「危険だ」と学習してしまう
たとえば――
「あそこのコーヒー700円だったよ」
と聞いて、
→「高いね!」と即反応する人
→「おいしいの?」「どんなお店?」と返す人
反応のしかたって、人によってけっこう決まっていますよね?
これは、神経系がパターンを作っているからです。
このような反応の蓄積や、ショックな出来事への反復反応が、
神経にとっての「トラウマ記憶」になることがあります。
ポリヴェーガル理論では、
トラウマとは、神経系が「危険だ」と学習したまま、切り替えられなくなった状態
と考えます。
けっこうありますよね。危険というか、苦手意識だったり、好きな傾向だったり。
トラウマは「記憶」ではなく「今も続く反応」
日常にこんなサインはありませんか?
・本当は安全な場所でもリラックスできない
・優しい言葉でも、なぜか疑ってしまう
・体がずっと緊張していて、眠れない・食べられない
これは「気持ちの問題」ではなく、
神経系のスイッチの誤作動とも言える状態。
「ニューロセプション」という無意識のセンサー
では、どうすれば切り替えられるのでしょう?
その鍵を握るのが、
「ニューロセプション(neuroception)」=無意識の安全センサーです。
このセンサーが「安全だ」と感じたときに、
腹側迷走神経が働き、自律神経が整っていきます。
トラウマ治療とはつまり、
この安全センサーを“再教育”していくプロセスなんです。
整体だからできる、“触れる安全教育”
整体や手技療法には、神経に直接ふれる言葉のない対話があります。
・声のトーン
・触れ方のリズム
・空間の静けさ
こうした要素が「あなたは今、安全だよ」と神経に伝えてくれるのです。
施術家として大切にしていること
ゆがみの中に、過去の反応があることも
もちろんすべてのゆがみがトラウマ由来ではありません。
でも、あるゆがみは神経の“繰り返された防御反応”かもしれません。
|身体の緊張パターン=「どう感じて生きているか」の痕跡
それを、触れながら静かに受け止めるのが私たち施術家の役割です。
“安全のニュアンス”を触覚で届ける
・不意打ちの触れ方を避ける
・施術者の心拍数をあげない→ベッドサイドをゆっくり移動するなど
これだけでもあなたの神経にとっては大きな「安心」です。
「治す」よりも「伴走する」存在に
「治してあげる」ではなく、
“そばにいる”という信頼感を築く。
これがあるとき、神経ははじめて防御を手放してくれます。
『ここに来たらお腹がやわらかくなる』
『さっきまで痛かったのに、あれ?どこやろ』
そういった言葉を聞かせてもらうことがよくあり、それはこの安全であったり、信頼関係が生み出すものだと考えています。